『AIバブル後の投資戦略』書評:オルカン一択で大丈夫?投資歴30年の私が納得した「真の分散投資」

最近読んだ本の中で、久しぶりに「これは今の市場環境に一石を投じる力作だ」と唸らされた一冊がありました。

中村仁 著『AIバブル後の投資戦略 真の分散投資を求めて』(ダイヤモンド社)です。

新NISAの普及も手伝い、「とりあえずオルカン(全世界株式)やS&P500を買っておけば安心」という風潮がすっかり定着した感があります。しかし本書は、そうした安易な風潮に冷静な冷や水を浴びせつつ、これから訪れるかもしれない相場変動をどう乗り越えるべきか、きわめて実践的な道筋を示してくれます。

今回は、30年以上の投資経験を持つ私の目線から、本書を読んで特に「ハッとさせられた」「深い納得感があった」5つのポイントを中心に、レビューをお届けします。

AIバブル後の投資戦略

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中村 仁 ダイヤモンド社 2026年07月16日頃

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中村 仁 ダイヤモンド社 2026年07月16日頃

目次

AIの未来と「株価」は別物〜バブル崩壊の起点となり得る意外な盲点

まず膝を打ったのが、AIバブルに対する構造的な分析です。

本書は決して「AIの未来」そのものを否定しているわけではありません。技術革命としてのAIの可能性を認めつつも、「技術の未来」と「関連銘柄の株価動向」は必ずしも一致しないという事実を、論理的に解き明かしていきます。

特に印象的だったのが、OpenAIに関する指摘です。 Alphabet(Google)をはじめとするBig Tech群と比べると、OpenAIは強い財務基盤(経営体力)を備えているわけではありません。著者によれば、まさにこの「中心にいるプレイヤーの財務的弱さ」などが、AIバブル崩壊の引き金(トリガー)になり得るというのです。

過熱する相場の中にいると見落としがちな、非常にリアルで鋭い視点だと感じました。

「オルカンさえ買っていれば安心」という盲信への警鐘

現在、猫も杓子も「オルカン(世界株投信)」という雰囲気が漂っていますが、本書はここにも明確な疑問符を投げかけます。

地域や銘柄がどれほど世界中に分散されていようと、オルカンはあくまで「株式」という単一のアセットクラス(資産分類)の中での分散に過ぎません。

市場全体が大きなショックに見舞われた際、株式同士の相関関係は跳ね上がり、どれだけ国を分けていても一斉に連動して下落します。「100%株式」に資産を集中させているリスクを自覚しないまま、「放置で大丈夫」と盲信する今の風潮は、確かに非常に危険だと感じます。

投資歴30年以上の目から見ても納得の「コア・サテライト戦略」

では、私たちはどう資産を守り、増やしていけばいいのか?

本書の真骨頂は、批判だけで終わらず「真の分散投資」に向けた具体的なポートフォリオ(例)が提示されている点にあります。

資産を「コア(基幹)」と「攻めもしくは守りのサテライト(運用)」に分け、アセットクラス(株・債券・オルタナティブなど)を超えた配置の例が具体的に示されています。

バブル崩壊や数々の暴落相場を長年経験してきた身から見ても、このポートフォリオの考え方は非常に合理的で、強い納得感がありました。初心者だけでなく、ある程度経験を積んだ投資家にとっても、自身のポートフォリオを再点検する素晴らしいヒントになるはずです。

著者(中村仁氏)の圧倒的なバックグラウンドと日米の金融格差

本書の分析がこれほどまでに深みを持っている背景には、著者である中村仁氏の卓越した経歴があります。

東大法学部・同大学院を経て財務省へ入省、その後スタンフォードMBAを取得し、マッキンゼーでも活躍されたという圧巻のキャリア。著者のような人物だからこそ描ける、マクロ経済の構造的な把握と論理の組み立てには終始圧倒されます。

特に、スタンフォード発のスタートアップが新しいテクノロジーを駆使し、これまでにない金融・証券ビジネスを立ち上げているアメリカの最新事情についての記述は秀逸です。日本より一歩も二歩も先を行く金融の最前線がリアルに伝わってきて、読み物としても非常に刺激的でした。また、日本と違い、ETFの人気が一段とアメリカでは高まっているの面がよく分かりました。

ポジショントークを感じさせない誠実な姿勢

実は読む前、ひとつ懸念していたことがありました。著者は資産運用関係の会社(ブルーモ証券株式会社)の代表を務めているため、「最終的には自社やサービスの宣伝に誘導する本なのでは?」という警戒感があったのです。

しかし、その予想は見事に良い意味で裏切られました。

自社ビジネスの宣伝色は控えめに抑えられており、一人のプロフェッショナル・実務家として、個人の資産形成に誠実に向き合っている姿勢が強く伝わってきました。この商業的なアピールの少なさも、本書の信頼性を一層高めていると感じます。

おわりに:暴落が来てからでは遅い

過熱するマーケットの中にいると、私たちはついつい「今の好調がずっと続く」と思い込んでしまいがちです。しかし、相場が崩れてから慌ててポートフォリオを作り直すのでは遅すぎます。

  • 「オルカン一本足打法」で運用している方
  • AI銘柄の連日の高値更新に、どこか一抹の不安を感じている方

そうした方にこそ、ぜひ手に取ってほしい力作です。「自分にとっての本当の分散とは何か?」を問い直す、絶好の機会になるはずです。

私自身も、この機会に自身のポートフォリオを改めて点検してみたいと思います。

I hope you like it.

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