鎌倉投信の代表取締役社長・鎌田さんより、久しぶりに出版された本を献本いただきました。
変わった本である
まず、本書のタイトルを見ていただきたい。
「社会をよくする」投資入門とある。副題は「経済的リターンと社会的インパクトの両立」
今巷では、(新)NISA本が書店に溢れ、高配当株の本やインデックス投資を勧める本ばかり
そんな中で、本書はそんな風潮にアンチテーゼを投げかけるものとなっている。
特に本書の前半では
・金融市場のマイナス面の強調
・インデックス運用の弊害
・経済成長のジレンマ
といった市場経済・マーケットに関する著者の強い問題意識が語られている。
個人的には、そのプラス面についても、もう少し触れた方がバランスが良い感じがしないでもないが、それだけ現状に「憂い」の感を持っており、その点をはっきりと打ち出したかったのだろう。
なので、「変わった本」というのは「変な本」であるという意味ではなく「褒め言葉」として受け取っていただきたい。
特に前半で我が意を得たりと思ったのは、個人投資家の間で投資本の名著とされる『敗者のゲーム』(チャールズ・エルス)や『ウォール街のランダム・ウォーカー』(バートン・マルキール)に欠けているものの指摘だ
これらの本が金融市場の中、つまり企業価値だけで論理が構成されており、「社会全体で投資が果たすべき役割」について目が向けられていない事については、私も大きく首肯したい。
考えながら読む本である
後半では、第5章で最近流行りのESG投資や徐々に認知されつつあるソーシャル・インパクト投資などについて解説
その後、普遍的な投資で成功するための8つのカギが示されている
・先入観をはずす
・株価(価格)ではなく価値に投資する
・経済法則を利用する(複利と分散)
・感情を排除する
・シンプルである
・予測しない
・投資に期限を設けない
・投資観を持つ
どれも、私も重要なものだと同感。多くを実践しているつもりだ。
第6章では、2010年3月に運用を開始した鎌倉投信「結い2101」でこれまで実践してきたこと、そして新たな挑戦などについて、実際の「行動」を踏まえた「社会や自分をよくする」投資について、深みのある言葉が述べられている。
本書は普段読み慣れている投資本とは、主たる論旨が異なることもあり、内容自体は平易に書かれているものの、考えながら読んだため、読むのに少し時間を要した。おそらく、他の読者も同様であろう。
最後に
今回、鎌田氏が書き2011年に出版された『外資金融では出会えなかった日本でいちばん投資したい会社』以来、かなり久しぶりにまとまった文字でその考えを確認することになりましたが、会社設立以来、微塵もブレがない。そう強く感じた次第です。
たまには、ちょっと「変わった投資本」を読んでみてはいかがでしょうか
I hope you like it.