つばめ投資顧問の「顧問」に就任

真のバリュー投資のための企業価値分析(柳下裕紀)

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投資の世界で有名人はたくさんいますが、日本人で特に優れた投資実績の持ち主として私が想起するのが今回ご紹介する著者の柳下裕紀(やぎしたゆき)さんです。

著者プロフィール

・1964年生まれ。現在、株式会社Aurea Lotus代表取締役
・国内外(香港・米国・日本)で20年以上の株式ファンドマネージャー経験含め、企業再生・M&A・債券ストラテジスト等の非常に多彩な経験を有する
・現在は香港のヘッジファンドから委託を受けた日本株と米国株の私募ファンド運用に従事しながら、国内中小企業向けコンサルティングや、主宰する個人投資家向けプログラムを通じた講義・講演などを行っている
・なお、私も数回ですが、上記講義を受けたことがあります。その際、柳下さんにお金を託すとしたら、どれ位から可能か聞いたところ「お呼びでない」ことが判明したことがありました。

本書概要

・まず、さっと読んでみての最初の感想は非常に良書だということでした。ただ、一言申し上げておかねばいけないのが、ある程度前提となる基本的なこと(PERとかそんな超基本ではなく)を知っていないと「知らないこと」だらけで十分理解できないということです。
・例えば、本書で出てくる用語には以下のようなものがあります。例示:ROIC、EVA、CAPM、WACC、DCF、参入障壁、IRRなど(横文字が多くてすいません)
・もちろん、本書ではこうした用語について分かりやすく解説していますが、「ある程度」事前に知っていないと読みこなすのがシンドイという話です。ちなみに、私は金融機関に約30年勤めていましたし、20代で中小企業診断士、30代で証券アナリスト、40歳前後で公認内部監査人の資格勉強をするなどにより、こうしたテクニカル・タームについては一通り「若い頃」勉強したことがありますが、上記の様な感想を持った次第です。
・そして、一番強調して申し上げたいのは本書は単なる株式投資の本ではなく、事業投資家、つまり企業などでビジネスにおける数々の意思決定を行なっているビジネスマンにとって、非常に有用な内容の本であるということです。つまり、本書を読みこなして、自分のものとすれば「仕事にも役立つ」ということです。

個人的に注目した箇所(ごく一部)

真のバリュー投資の定義

・真の価値と支払う価格の乖離=差異によって“儲ける”投資
・時間を味方につける投資

「価値」とは、当該主体が自ら創造するモノ、「価格」とは、その時々で他者が欲する分量によって決まるモノです。

価値に投資するのですから、株価の動向・変動やタイミングなどを気にすることはありませんし、価格自体を分析・判断の材料にすることもありません。

本質価値とは

会計上の利益はフィクション、キャッシュ・フローこそ力の源泉

PER、PBR、EPSなどの指標は、価値とはまったく無関係な数値を基に計算されている

企業価値に最大の影響を与える資本コスト

資本コストは、投資家(債権者と株主)が、自分たちの投資した見返りとして要求する収益率。企業側からすれば、投資家に支払うべきコスト

特に短期志向の投機家が一気に高いリターンを要求すると、価値が毀損

長期的かつ安定的に価値を創出する企業にとってベストな経営を行うためにも、支援してもらう株主を、企業自らの発信(IR)によって能動的に選ぶように行動せねばならない

日本で「万年割安」に放置される銘柄が多い要因の1つは、適正水準の価格形成に果たす役割、つまりIRの不足がある

CAPM(資本資産評価モデル)

CAPM=リスクフリーレート+β×マーケットリスクプレミアム

CAPMの算定方法は、データの抽出期間やタイミングによるイイカゲンさ、だけでなく、根本的に「そもそもファンダメンタル分析であるはずの企業価値評価を行う際、価格変動リスクというテクニカルファクターを使っている」問題をはらんでいる

参入障壁とは何か

「代替性が低く、高いマージンを得ることができない商品やサービス」という意味で、これがもたらす付加価値であり、参入障壁をもたない、もしくは低い企業との差額の部分がフランチャイズバリュー

フランチャイズバリューの創造力が高い企業が、イコール、バリュー投資で選択すべき銘柄

参入障壁の一つ、規模の経済性は近年では高齢化など市場の縮小、ICTによるネットワーク化などによる、梃子の反作用現象により、逆に小資本のメリットも目立つようになった

その他

本書には、他にもビジネスモデル、ファイナンス理論の基礎、M&Aによる価値創造など「事業投資家」が知っておくべき重要事項がわかりやすく解説されています。

そして、アマゾン、ホームデポ、クアルコム、ワークマン、日東電工、ダイキン工業、シマノなど内外の企業の事例・取組みなどが随所に出てくるのが興味をそそりました。

最後に

・本書「はじめに」おいて、株式に限らず人生は常に「価値と価格の交換」による「投資決定」の連続であり、これを意識することによって、人生における選択の自由の幅は大きく広がり、生み出される価値の量と質が格段に変わるはず、ということが書かれていました。

・「本書概要」に書いた通り、本書はある程度前提となる知識が必要ですが、これがある方が読めば、間違いなく面白いと思います。そして、仮に読んでみて理解不足が生じたとしても、本書読了を契機として関連図書などに手を伸ばし、レベルアップが図れるのであれば、それも良いかもしれません。

I hope you like it.

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この記事を書いた人
エル

50代、4人家族。1991年株式投資を開始。リーマンショックの影響により過去最高の含み損を抱えるも、2009年末に復元。2011年レバレッジ投資(両建て投資)終了。2019年セミリタイア。現在は米国株を中心に運用中。趣味は読書で「積ん読」は数百冊を誇る。音楽や映画鑑賞も好きです。

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