バートン・マルキールの『ウォール街のランダム・ウォーカー(原著第11版』を読了しました。原書は1972年に出版され、それ以来ほぼ4年に一度改定されてきた定評のある本です。
私は日本でのタイトルが「ランダム・ウォーク」だった頃(1990年代初め)に最初に読み、第9版に続いての読書(内容確認)となります。
読んだ感想は「期待」が高かったため、満足度はモードの★★★☆☆です。
本書の中核のメッセージ
「個人投資家にとっては、個々の株式を売買したり、プロのファンドマネジャーが運用する投資信託に投資するよりも、ただインデックスファンドを買ってじっと持っているほうが、はるかによい結果を生む」
著者曰く「それから40年以上経った今、私はこの考え方に一層確信を持つようになった。」
今回改訂のポイント
何度も改訂されている理由について、著者は「この40年間におびただしい数の金融商品が開発され、提供されるようになったことである。個人投資家への総合的な投資指南書を目指す以上、その時々に利用可能な投資商品について知識を提供するために、頻繁に改訂する必要があった」と言います。
- 第10章で「行動ファイナンス」と呼ばれる新しい学問分野を紹介し、それが個人投資家にもたらす教訓をとりまとめた。
- 第11章では「スマートベータ」運用が本当に役立つのかどうかを検証(注あり)
- 従来日本語版では割愛されていた「財産の健康管理のための10カ条」(第12章)を収録
- 第14章「投資家のライフスタイルと投資戦略」において、定年退職した人およびそれを目前に控えた人のために、新たな一項を設けて具体的な投資方針を取り上げた。
- いわゆる「ランダム・ウォーク理論」(市場における株価形成は非常に効率的であり、チンパンジーがウォールストリートジャーナルの相場欄にダーツを投げて選んだ銘柄からなるポートフォリオでも、プロのファンドマネジャーと同じような成果を上げることができるという考え方)を厳密に検証
私の感想
前回の読書時と同じですが、「この本、面白かった!」という読後感は正直全くありませんでした。
市場平均そのものを保有することが、個別株の売買や殆どのアクティブファンドよりもコスト・税金勘案後で優位であるという結論。さらに、株式のインデックスファンドを長期保有していれば、債券等その他のアセットクラスよりも資産形成に適しているということについて、異論をはさむ余地がない事は少なくとも米国株については、多くの実証データから言えます。
本書を読んでも刺激を受けないのは、本書に書かれている内容の多くが浸透し、ある意味「常識」となってしまったためかもしれません。
最後に「訳者あとがきに代えて」から、本書を翻訳した井手正介氏の言葉を引用します。
「日本企業の平均ROEが一桁台の高いところまで来た現在、市場インデックス・ファンドの安定保有こそが、それ(年平均5〜6%の利回り)を可能にする金融商品たり得るのだ。(中略)本書は長年、日本の投資家にとって優れて啓蒙的な投資本であり、また教養書であった。しかしここへきて初めて、それに加えて実践的な手引書になったのだ。」
追記
原著第12版が出ましたので、そちらをリンクしておきます。
I hope you like it.