大江英樹さんから、著書をご恵贈いただきました。
新書にしては、厚く279ページもあります。手にした瞬間、大江さんの気合いと内容の充実感を予感。
実際、大変中身の濃い一冊で、おすすめの内容となっていました。
著者プロフィール
本作で30冊目となる売れっ子作家ですし、世の中の人も当然誰でも(笑)知っている錯覚にとらわれますが、意外と本を読まない人や投資に関心がない人はご存知ないものです。
ですので、不要かもしれませんが、改めて著者プロフィールを簡単に紹介しておきましょう。
・著者は1974年から定年まで野村證券一筋のサラリーマンでした。少し詳しく説明すると、60歳での定年退職後、半年間だけは「再雇用」の身分も経験。また、最後の10年間は社員数60名程度の関連会社に在籍した経験も有します。
・サラリーマン後半は当時は必ずしも主流業務ではなかった確定拠出年金の関係業務に従事。奥様の加代さんともに年金関係に大変詳しい経歴の持ち主です。上記会社を退職後、2012年に株式会社オフィス・リベルタスを設立。資産運用、企業年金、シニア層のセカンドライフプランニングなどをテーマとした講演や執筆活動などを行っています。
・業務経験ではなく、退職後、ご自身で勉強した行動経済学に関するものなどロングセラーの本が多くあります。
本書概要
上記の通り、これまで年金や行動経済学、シニアの定年後の生活に関する本などを出版していますが、著者いわく「初めて投資にフォーカスした本」です。
昨今のようにマーケットが好調な時には、マスメディアも金融機関もこぞって投資を勧めてきます。ところが「投資を始めたもののあまり儲かっていない」、「日経平均はこれだけ上がっているのになぜ自分は儲からないのか」という声もよく聞きます。それは投資の原理原則を理解していないからです。
本書にはチャートの見方や個別株の分析の仕方などはほとんど出てきませんが、それよりも前に、投資全般にわたり「万人」が知っておくべき「投資の本質」が大変平易な表現で書かれています。文章がとても読み易いのが著者の特徴でもあります。
個人的に注目した箇所
<投資を行う上で必要なこと>
・自分でリスクを取る勇気があること
・自分の頭で考えること
・最低限の勉強をしておくこと
<投資は不労所得ではない>
投資は「リスクを取って判断する」という意味において、会社の経営者と同じ
<長期投資で「リスク」は小さくならない>
要するに「長期投資がリスクを低減する」というのは、「長く投資をすればその変動幅は平均値に近づきますよ」というごく当たり前のことを言っているに過ぎない
<「ハイリスク・ハイリターン」の意味>
「ハイリスク・ハイリターン」の正しい意味は何か。それは「高いリターンを求めると必ずリスクは高くなる」ということ
<株価は「鏡」ではなく「影」に過ぎない>
株価は企業実体を写し出す鏡ではなく、企業に光を当てることによって生じる影なのだ。この場合の「光を当てる」というのは投資家の心理のこと
<投資信託の本質>
「自分ではできないことをやってもらうための仕組みであり、その器」
<リスク許容度を年齢だけで判断するのは危険>
若い人のリスク許容度が高い理由はただ一点。それを失敗しても取り返せる時間があるということだけである。つまり金融資産で損失が生じても、それを補うだけの人的資本を持っているということ
<インデックス投資とパッシブ投資の違い>
インデックス投資というのは「特定の指数に連動することを目指す」手法
パッシブ投資というのは「マーケット全体に連動することを目指す」
<「資産の総合アドバイザー」といういかがわしさ>
金融機関のCMはイメージ戦略に過ぎない。情報の非対称性によって売り手と買い手の知識の差があまりにも大きいと考えられる場合は、「大企業」「安心」「プロ集団」というイメージ戦略が功を奏する
<投資は“うしろめたいこと”ではない>
どうも多くの投資家は「投資すること」を何とか正当化したいという気持ちがあって、投資することの免罪符を求めているように思える。(略)
そもそも会社を応援したいのであれば、投資よりもその会社の製品やサービスを購入してあげたほうがいい。
株式投資は、損失は限定されながら儲けは無限大という実によくできたシステム
最後に
以上の通り、なるほど良いことが随所にあってとても紹介しきれない本書は、投資ビギナーやベテラン云々の範疇を超えて、大変おすすめです。
投資に必要なもの
「勇気」と「思考力」と「少しの勉強」
I hope you like it.