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「ほったらかし投資術」に対する疑問点

少し前ですが、山崎元・水瀬ケンイチ両氏の共著『ほったらかし投資術』(全面改訂 第3版)を読みました。

散髪の待ち時間を無駄に過ごすのが嫌で、散髪屋の側の書店で購入し、即日読了したものです。

定評あるベストセラー本なので、当然のことながら一定のクオリティに仕上がっていました。

私は個別株のアクティブ投資家ですが、インデックス投資が一番!と説く本書は、オリジナル版(2010年)から全て「なんやかんや」言って、自分のお金を払って読んでいます。
(参考)【ブックレビュー】全面改訂 ほったらかし投資術 インデックス運用実践ガイド

今回の全面改訂 第3版の特徴

これまでは共著者の間で、見解が分かれる部分は「両論併記」でしたが、今回は統一見解としたことが最大のポイント

そして、具体的な投資対象はこれまでの複数の投資信託の組み合わせではなく、世界株に連動する投資信託1本に投資すれば良いというものです。

この結論については、広く一般の投資家にとって、リバランスも要らず楽ちんであり、一番無難な結論であることには異論はありません。

でも、少々、気になる点

この日本株でも、米国株でも、先進国株でも、新興国でもなく、全世界株(日本含む)のインデックスファンドにリスク資産の投資対象を絞った背景が、第4章の125ページから書かれています。

具体的には、国内籍の以下のETFから計算したリスクと相関係数(2016年8月から2021年7月末値から計算)を比較

・TOPIX(1306)
・S&P500(1557)
・世界株(日本除く)(1554)
・先進国株(日本除く)(1680)
・日経平均(1321)
・新興国株(1681)

その計算値全てを、本書から引用することは控えますが、過去のデータは1)リスクの大きさについては「まあまあ役に立つ」、2)相関係数については「不安定だが参考になる」、3)期待リターンに関しては「ほぼ役に立たない」との考えのもと、主に上記投資対象の優劣をリスクの大きさで判定する説明となっていました。

日本株単独や新興国株単独は論外として、リスク(年率標準偏差)は

・S&P500:17.0%
・世界株(日本除く):16.2%
・先進国株(日本除く):16.6%

となっていました。

ここであれ?と思ったのは、肝心の全世界株(日本含む)がなかったことです。

読み進めると、「日本株含む全世界株に連動するETF運用期間が5年以上ある銘柄が東証になかった」のでデータに含めていないこと、「現在日本株は世界株の6%前後の時価総額であるものの、日本株を含む世界株の方が僅かながらリスクが小さくなるはず」との記載がありました。

ここで私が気になるのは以下の点です。

・どうして、マイナーな東証ETFのデータを採用したのか?バンガードのVTなどを使えば良いのではないか?
・計測期間が5年だけとした根拠は?もう少し長い期間で計測した場合、どうだったのか?

です。

さらに、「米国株にだけ投資すると制度の変更や政治の変化など米国固有のリスクに集中投資することになる」ことを避けるため、全世界株への分散投資が望ましいという考えはその通りだと思いますが、

P128に記載がある「米国市場にだけ投資するよりも、グローバルに広く分散投資する方がリスクは小さい傾向がある」とのエビデンスとしては弱いと感じました。

私は米国株に主に投資しているので、バンガードのS&P500に連動するVOOと世界株に連動するVTを海外のツールなどを使って、よく比較しますが、実際にはリターン、シャープレシオなどVOOが優っている局面が多いように感じます。

つまり、世界株への投資がいいというのは、定量的な理由よりも、アメリカの政治が今後どうなるか分からない等の定性的な理由(これは、実際、否定できません)によるところが大きいのだと思います。

以上、少し気になる点を挙げました。

なお、投資に時間をかけたくない、個別株を選ぶのが無理な人が投信1本でアクティブ投資家の平均の成績を得られるこの方法は大変素晴らしいですが、世の中には私の様に、日米の個別株への投資が全く億劫ではない投資家もいて、「個別株のむなしさ」を感じる人ばかりではないということを強調しておきたいと思います。

P.S.
東証ETFを選択したのは、為替のことを考慮しなくてよく、簡便だからでしょうが・・・

I hope you like it.

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