久しぶりに再読。
著者は、広瀬隆雄氏。カルフォルニア在住の投資顧問会社の代表の方です。JPモルガンやSGウォーバーグなどを経て、現在は独立。個人投資家にもお馴染みのMarket Hackの編集長でもあります。
タイトルをよく見ていただければ分かるとおり、米国株式への投資ではなく「米国式投資」の技法となっており、株式だけでなく、それ以外の投資商品も含め「アメリカの投資家の間では常識と考えられている普遍性の高い」ノウハウを簡潔にまとめたものとなっています。
序章
1990年代のシリコンバレーとMarket Hack流投資術が編み出されるまで
chapter1
Market Hack流投資術
chapter2
ポスト段階ジュニア世代のネストエッグ戦略
chapter3
デイトレーダーへの道
chapter4
長期投資への道
chapter5
2014年の投資機会
序章で、著者は「本当に役に立つな」と自分が感じたノウハウを惜しみなく書いたと言っています。
確かに特別変わったことは書かれていませんが、私の目から見ても「なるほど」と実感できることがサラリと書かれていました。
詳述しませんが、本書のコアとなるchapter1「Market Hack流投資術」の項建ては以下のとおりとなっています。
・営業キャッシュフローのよい会社を買え
・保有銘柄の四半期決算のチェックを怠るな
・業績・株価の動きが荒々しい銘柄と、おとなしい銘柄をうまく使い分けろ
・分散投資を心がけろ
・投資スタイルをきちんと使い分けろ
・長期投資と短期投資のルールを守れ
・マクロ経済がわかれば、投資家としての洗練度が格段に上がる
・市場のセンチメントを軽視する奴は儲けの効率が悪い
・安全の糊代をもて
・謙虚であれ(投資の勉強に終わりはない)
以下、個人的に重要だと思った部分についてメモしておきます。
・営業キャッシュフローは純利益よりも大きくなければならない
・営業キャッシュフロー・マージン(営業キャッシュフロー/売上高)が15%〜35%ある会社を狙え
・ホッケー・スティック型に、四半期の最後の月の売上高が急増することで、なんとか数字を達成する企業は、悪い会社だ
・期末に駆け込みで数字を作った企業の四半期決算は、売掛金が多く残る
・空売りを得意とするヘッジファンドなどはこの売掛金の動きを特に注意深く観察
・上場間もなく決算を2回連続でしくじった会社の株は売れ!
・よい株というのは、来る決算も来る決算も、毎回、キッチリと予想を上回る株
・個人投資家は10〜16銘柄くらいに抑えたい。20銘柄を超えた時点で、それ以上分散することの効用は、手間より小さくなってしまう
・ひとつのスタイルが勝ち始めると、数年にわたって勝ち続ける
・グロース銘柄で株を買った直後から利が乗り始めないのなら、銘柄選択や買うタイミングを間違った可能性が高い。すぐ処分せよ
・バリュー投資とは、過去にだいたい高い評価を維持できていた会社が、何かの拍子に今だけ割安に放置されており、黙って持っていれば自然にまた昔の姿に戻る・・・・・・だから今の割安は、あくまでかりそめの姿なのだということを読めないといけない
・ワイド・モート(wide moat:城池):1)市場規模がバカでかい2)市場占有率が圧倒的である3)構造的優位性(=多くの場合低コストになる特別な秘密を持っている)4)太刀打ちできない無形資産(ブランド)5)ネットワーク効果6)ユーザーや顧客にとって乗り換えコストが大きすぎる
・バリュー投資のルーツはグロース投資よりも古く、理論的な礎は1934年の『証券分析』(ベンジャミン・グレアム、デビッド・ドッド)が元。同書〜「ある株が投資に値するかどうかの判断は市場全体の流れの中で決まるもので、「この値段なら買い」というふうに自動的、固定的なものは存在しない」「「安全の糊代」を十分にとることだけが分析に交じり込む数々の不確実性に対する予防方法である」
・長期投資なら、上場して20年くらい時間が経っている銘柄に投資したい
・ヘッジファンドがポジションを建てることを「インプリメンテーション」といいます。インプリメンテーションは細心の注意を払って実行されます。でも手口がバレないことは稀です。だから例えば、ジョージ・ソロスなどの場合でも、自分がどう考えているか、自分がどういう投資戦略をしているかはそれほど包み隠ししません。
・なぜ一般投資家はそういう有名人のトレードを模倣することから利益を得ることができないのでしょうか?それは彼らの相場観は世間的常識から外れていることがほとんどだし、容易に受け入れがたい発想ないしは価値観だからです。
・生存者バイアス:サバイバルした人の数を数えるのは簡単だけど、失敗者の数を正確な統計にするのは困難
・NISA向きな銘柄:値動きがマイルドで、なおかつ高配当の銘柄
・先物取引とは真剣にトレードを追求する個人投資家が最終的にたどり着く究極の金融商品である
・投機という言葉にはなんとなく悪いイメージがありますが、実際にはヘッジャーのリスク軽減のための反対側に立つ重要な役割を果たしている
・もしこの世にスペキュレーターが存在しなければ、商売をするうえでのリスクは一般消費者にコストとして転嫁される
・トレード・プランの基本になるのは、その日のマーケットのボラティリティに関する予想を立てるということです。
・米国連邦準備制度理事会(FRB)は消費者物価指数が2.5%を超えると、とたんにインフレに対してピリピリし始める
・長期にわたって会社の価値を堅実に育むことができたかどうかのトラック・レコード(実績)に注意を払うべきです。(略)その一例が1株当たり純資産(BPS)です。(略)これは「いつこの株を買うか?」というマーケット・タイミングを測る尺度としての利用価値は低いのです。でも超長期で1株当たり純資産の推移を観察することで、その企業の手堅さを推し量ることができるのです。
・チャールズ・エリスやジョン・ボーグルなどがインデックス投資を推奨した時代は、マーケットにとってとりわけ幸福な時代であったことを忘れてはならない
・投資家のリスク許容度が下がってしまった時は、どんなに内容のよい国でも売られる
・中国政府が「シャドー・バンキングの処理は終わった」とシグナルするまでは、どれだけバリューがあるように見えてもPEマルチプル(株価収益率で何倍まで買われているか、ということ)は萎縮するものと思われます
以上です。意外と、たくさんの数になりました。
個人的に、「やはりそうか!」と膝を打ったのがBPSに関する記述です。
私の過去記事(【オススメ記事】優良企業の簡単な見分け方) とあわせてお読みいただくことで、理解が深まると思います。
やや、カバーする範囲を拡げ過ぎた感はありますが(足元の投資環境に関して書かれた「2014年の投資機会」は少なくとも余分)、投資を実践している人が読めば「なるほど」「当然」と思うことが書かれていました。
上記メモに共感できる方は「読んで損しない本」だと思います。
I hope you like it.