発売前から注目し、アマゾンで予約注文していた本書。
バリュー投資家のための「米国株」データ分析:ひと握りの優良株が割安になるときの見分け方(ひろめ・著)
手に入れて、今回は「気になる箇所」から最後まで読み終えました。
はい。私のようなリタイアし運用だけでこれから生活しようと考えている人は、必読本でした。
著者紹介
・著者の「ひろめ」氏はブログ「複利のチカラで億り人」の管理人。1980年生まれで国立大学大学院(博士前期課程)修了。
・2014年から運用、2015年から米国株運用を本格的に開始し、2016年からブログを開始。
・二度の転職を経験し、サラリーマンからの脱却を決意。自分のような給与所得に頼らない自立した生き方を目指す人を応援している。
本書目次
長くなりますが、本書がいかに「実用的」な本であるかが一目でわかるので、まずは目次をご覧ください。
第1章 ひと握りの優良株に投資する方法
1-1 優良株の見分け方
優良株の条件
個人投資家が優良株に投資する現実的な方法
連続増配基準は複数存在する
増配スパンが12カ月以内の連続増配
暦年(CY)の年間配当を基準にした連続増配
会計年度(FY)の年間配当を基準にした連続増配
1-2 S&P 500配当貴族指数(S&P 500 Dividend Aristocrats)
配当貴族指数の条件
スピンオフや株式分割された銘柄の扱い
銘柄分散の基準
セクター分散の基準
リバランスは年4回
配当貴族指数の構成銘柄
配当貴族指数 vs S&P 500指数
1-3 配当チャンピオンと配当王
配当チャンピオンの歴史
配当チャンピオン(Dividend Champions)の定義
配当チャンピオン一覧
配当貴族指数と配当チャンピオンの違い
配当王の定義
配当王 vs S&P 500指数
1-4 配当公爵(Dividend Dukes)
配当公爵の定義
配当公爵リスト
配当公爵 vs S&P 500指数
1-5 配当貴族指数 vs 配当王 vs 配当公爵
最も高いリターンが期待できるのはどれか?
コラム バークシャー・ハサウェイも優良株の1つ
第2章 バリュー投資の実践術
2-1 バリュー投資の本質
株価と価値の違い
バリュー投資の難しさ
個人投資家がバリュー投資を成功させる現実的な方法
2-2 優良米国株のバリュエーション判断
銘柄ごとに割安なバリュエーションを計算する
過去のPERから割安/割高な株価を求める手順
「四分位数」を使って判断基準を明確にする
EPSガイダンスから割安/割高な株価を求める手順
過去のPSRから割安/割高な株価を求める手順
売上高ガイダンスから割安/割高を判断する手順
過去のPBRから割安/割高な株価を判断する手順
過去の配当利回りから割安/割高な株価を求める手順
配当性向の確認
重視すべきはトータルリターン
2-3 ポートフォリオの作り方
優良米国株のバリュー投資で必要な運用ルール
投資対象を25年以上連続増配銘柄に絞る
リスク資産:無リスク資産=90%:10%
12~18銘柄に均等分散投資する
異なるセクターの割安株にバランスよく投資する
保有株の連続増配記録が途切れたら必ず売却する
ポートフォリオのリバランスを定期的に行う
均等加重平均 vs 時価総額加重平均
コラム インデックス投資にも弱点がある
第3章 「米国株」データ分析の手順
3-1 米国株のデータ分析に必要な基礎知識
決算データの入手先
SEC Filingの種類
Form 8-K(Current Report)
Form 10-Q(Quarterly Report)
Form 10-K(Annual Report)
『米国株データ分析サンプルファイル』をおともに
3-2 PER(株価収益率)推移を求めてグラフ化する手順
過去のPERを求めるのに必要なデータ
過去の四半期決算発表日(時刻)をExcelに入力する
(調整後)希薄化EPSをExcelに入力する
英語版Yahoo! Financeで株価データを取得する
1日ごとの実績EPS(TTM)と実績PERデータを入力する
実績PER推移をグラフ化する
実績PERの最大値,中央値,最小値を求める
四分位数を使ったPERのバリュエーション判断
EPS成長率の確認
3-3 PSR(株価売上高倍率)推移を算出してグラフ化する手順
1株あたり売上高からPSR(株価売上高倍率)を算出する
PSR推移の計算に必要なデータの種類
四半期売上高と発行済株式数をExcelに入力する
四半期ごとの実績SPS(TTM)を求める
1日ごとの実績SPS(TTM)とPSRデータを入力する
実績PSR推移をグラフ化する
実績PSRの最大値,中央値,最小値を求める
実績PSRの割安/割高の目安を求める
SPS成長率の確認
3-4 PBR(株価純資産倍率)推移を算出してグラフ化する手順
BPS(1株あたり純資産)からPBR(株価純資産倍率)を算出する
PBR推移の計算に必要なデータの種類
四半期ごとの純資産をExcelに入力する
四半期ごとのBPSを求める
1日ごとの実績BPS(TTM)とPBRデータを入力する
実績PBR推移をグラフ化する
実績PBRの最大値,中央値,最小値を求める
実績PBRの割安/割高の目安を求める
BPS成長率の確認
3-5 配当利回り推移を算出してグラフ化する手順
配当利回り推移の計算に必要なデータの種類
1株あたり配当金(DPS)と配当権利落ち日をExcelに入力する
1日ごとの年間配当と配当利回りをExcelに入力する
配当利回り推移をグラフ化する
配当利回りの最大値,中央値,最小値を求める
配当利回りの割安/割高の目安を求める
配当性向の確認
コラム 集中投資がキケンな理由
第4章 配当にかかる税金の知識
4-1 米国株の配当にかかる税金の仕組み
米国株で発生する配当の二重課税とは
配当の課税方法は3種類から選択できる
所得税と住民税で,それぞれ別の課税方式を選択できる
住民税と所得税で異なる課税方式を選択するときは
4-2 配当の二重課税は外国税額控除で解消する
外国税額控除を利用するには確定申告が必要
外国税額控除には限度額がある
外国税額控除の繰越控除制度
4-3 ベストな配当課税方式を選択する
個々の状況に応じて最適な組み合わせを選択する
ベストな配当課税方式を選択するプロセス
所得税の配当課税方式を決定する際の考え方
扶養に入っている人は総合課税を選ぶ際に注意が必要
住民税の配当課税方式を決定する際の考え方
サラリーマンが住民税の配当課税方式を決定するとき
還付額の計算は確定申告書等作成コーナーが便利
読者特典『米国株配当集計Excelシート』の使い方
NISAを活用することで米国株の税率を下げられる
4-4 サラリーマンが確定申告するデメリット
サラリーマンの年間20万円以下申告不要ルール
確定申告するときは全所得の申告が必要
ふるさと納税ワンストップ特例制度も適用対象外に
確定申告すると逆に税金が高くなることも
4-5 年収ごとの「米国株」配当税率一覧
試算条件
米国株の年間配当が税引前10万円のケース
米国株の年間配当が税引前30万円のケース
米国株の年間配当が税引前50万円のケース
米国株の年間配当が税引前100万円のケース
米国株の配当にかかる最終的な税率を求める手順コラム
未来の増税リスクから考える配当税制のメリット
第5章 米国株と配当金生活
5-1 配当金生活するときの社会保険料
配当収入しかなければ前年所得をゼロにできる
国民年金保険料の免除制度
全額免除でも老齢年金は2分の1もらえる
全額免除でも障害年金と遺族年金の給付額は変わらない
退職後は「失業等による保険料免除」を利用する
国民健康保険料・介護保険料は前年所得ゼロで7割免除
国民健康保険料・介護保険料は自治体ごとに異なる
退職翌年度は「所得減少による減免制度」が利用できる
前年所得ゼロだと社会保険料はいくらになるか?
5-2 配当金生活するときの配当税率
米国株の配当収入しかないときの配当税率
米国株の配当金生活は株安よりも円高リスクに注意
外国所得税0%のADR(米国預託証券)
日本株の配当は配当控除が受けられる
配当金生活にADRと日本株を組み入れたときの配当税率
配当税率の比較
コラム 多様な生き方が選べる時代になっている
今回、読んだ箇所と感想
私は今回敢えて前半の米国株に投資する方法などを解説した箇所を飛ばして、第4章「配当にかかる税金の知識」と第5章「米国株と配当金生活」の部分を全て読了。
株式の配当にかかる税金の知識の理解に役立つ
本書のメインは米国株に関する解説ですが、米国株に付きものの配当の二重課税や外国税額控除に関する詳しい説明(他の投資本では見かけたことがない)だけでなく、日本株含めた最適な配当課税方式の選択方法がわかりやすく解説されています。
配当金生活(専業投資家)の社会保険料などを解説
そして、サラリーマンを卒業し収入が配当金しかない人を想定して、その人が社会保険料などを含めた公的な負担をミニマイズする方法を試算で例示。ネットなどで断片的に得ていた情報が非常にクリアになりました。これから、アーリー・リタイアを計画している人にとって、役立つことは間違いなしです。
最後に一言
本書「あとがき」には、著者は「本質」(何年経っても通用する知識)の伝達を意識し、「この1年はブログの更新をほとんどせず、採算度外視で本書を書き上げました。」とありました。未読の箇所も一瞥しただけで、その言葉に納得の仕上がりとなっています。
読書特典の「米国株配当集計Excelシート」も付いた本書は、まさに「米国株投資」を実際に行っていく上での「実用書」と言えるでしょう。
I hope you like it.