サイトアイコン 【L】米国株投資実践日記

『初心者でも勝率99%の株ポートフォリオ戦略』(山本潤)

私が絶大なる信頼を寄せる山本潤氏の本が出たので、到着した日に即読了しました。

山本氏のことをご存知ない方も多いと思いますので、まずはプロフィールからご紹介します。

山本潤さんはどんな人?

・1963年年10月生まれ。1988年島根大学法文学法文学科卒業。1990年島根大学大学院法学研究科修士課程修了。1990年和光証券入社。入社して半年で日本興業銀行の国際資金部へ研修生として約2年出向。和光証券に戻り引受企画部、株式オプション関連の企画開発、国際営業などを担当。
・1995年に国際営業部に配属されたのが転機となり、以降、当時のスパークス投資顧問の木村氏を師匠として、株式投資について学ぶ。最初のリサーチレポートは伊藤園に関するもの。このレポートを見た顧客の機関投資家から「うちに転職してこい」と声がかかる。その中で、希望する職種があった米系投資顧問クレイフィンレイに転職。
・1997年からファンドマネジャーを名乗るが、当時の同僚には投資本の翻訳などで有名な関美和氏もいた。
・1997年、TOPIXを20%以上凌駕した日本株チームは一躍脚光を浴び、98年と99年も100%以上のアウトパフォーマンスを叩き出し、フランク・ラッセルのユニバースで年金運用のトップに輝く。徹底的な財務へのこだわりと業界への勝ち組へのロングオンリー。
・2004年からは邦銀の依頼に基づき、GCIアセット・マネジメントと共同でロングショート戦略に挑戦。2017年までの空売りの実務を経験して、空売りも相場の方向性を当てることは難しいことを悟る。
・クレイフィンレイ在籍時代、社費で1999年東京理科大学工学部入学(夜間)。また、コロンビア大学院でも電気工学を学び、その時専攻したランダムノイズという確率論が現在も役だっている。
・次のニュースミス投資顧問時代にも、中央大学大学院の社会人学生として理工学部で数学の修士課程を終了。現在も博士後期課程の学生で、大学生活は通算17年という「勉強好き」。このため、投資手法は「数学」を武器としている。
・なお、私は著者の一番最初の書籍『インベストメント―米系バイサイド・アナリストの投資哲学と投資技法』(2001年:イーフロンティア)を当時読み、大変参考になったのを覚えている。

本書の紹介の前に前著の内容を軽く

本書は「ポートフォリオ運用」に関する本ですが、その組入銘柄の選択については、2019年1月に出た『1%の人が知っている 99%勝てる株が見つかる本』(かんき出版)を参照して欲しいという説明ぶりになっていたので、ごく簡単に言及しておきます。

「日本で初めての多段階配当モデルの実践書」

大半のファンドマネジャーが教科書に載っている汎用モデルしか知らないなか、数学的知識を応用した実務に耐え得る「多段階配当モデル(2段階モデル)」を開発。これが運用成果の差別化に寄与。同書は本来なら積分を多用しなければ利用できない複雑な多段階配当モデルを数々の工夫を施すことにより、数式を使わないで紹介したもの。

株の真髄は「成長株投資」である

株式投資による利益は「キャピタルゲイン」と「インカムゲイン」に分かれますが、この本で紹介するのは後者のインカムゲインによる投資、つまり、「長期的に配当の成長が期待できる株を購入し、投資額を早期に回収する」という手法。換言すると、配当が数倍、数十倍になる業績拡大が見込まれる成長企業、または、たとえ不景気になっても配当が維持される企業を見つけること

「20分でできる11のシンプル計算」を用い銘柄を選択

「成長株である条件」を満たし、「現在の株価が割安かどうか見極める」11の計算を行います。具体的には以下の通り。

・「営業費用売上比率が1.15以上」か?
・「配当性向が5割以上」か?
・「直近4年連続で増収」か?
・経営の数値目標や中長期の計画が発表されているか?
・「永続性」と「数量見通し」で商品を評価
・営業利益の6割(NOPAT)を計算する
・擬似配当総額を税引後営業利益の4割で計算する
・擬似的なROEを算出する
・ROEによる場合分けで7年後の配当予想金額を想定する
・将来配当と時価総額から将来の配当利回りを計算する
・上値目処を計算する

そして、ポートフォリオを作成したら年1回だけ確認する。

以上が本書と同じ出版社から出された前著の肝の部分です。

本書概要

「99%にかけた想い」
まず、本書「はじめに」では、前著(そして本書でも)のタイトルにあった99%の勝率について言及があります。

この勝率は「初心者でも実現できる」と再度強調した上で、ただし、これは短期ではなく(超)長期投資における勝率であると。

投資においての最重要な要素は、時間なのです。

「本邦初となる実践的ポートフォリオ入門書」

前著では、魅力的な投資先を選ぶための手法を中心に伝えたものの、「肝心の株式の運用方法」については触れていなかったことから、勝率99%をより確実にするための唯一の処方箋である「ポートフォリオ戦略」を伝授する必要性を感じたのが執筆動機だそうです。

著者曰く、これまでポートフォリオ理論をテーマにした株式投資の入門書が無かった理由は、1)その理解には統計上の概念を用いるためハードルが高いこと、2)株式投資の入門書の目的が「銘柄選び」に偏っていること、3)著者が株式評論家やトレーダー、ディーラーの出身者に偏っているから、と言います。

著者は現在も富裕層中心の顧客にポートフォリオ運用での助言を行っていますが、通常、著者のようなファンドマネジャーは社業優先のため、基本的に執筆活動をしないことも理由です。(私の知る限りでは、以前、山崎元氏が出した『ファンドマネジメント』がありますが、あれはプロ向けですね)

「長期投資への愛」を感じる書
本書では、随所に企業や社会を応援する姿勢が感じられます。そして、長期投資には「覚悟」が必要であると。

株式投資の「六悪」

・信用取引をしない
・集中投資をしない
・回転売買はしない
・値下がり目的の空売りをしない
・営業利益20億円に満たない企業に投資しない
・上場後間もないIPO株や業績のトラックレコードが短い企業に投資しない

第1章でこれら6つを「株式投資の六悪」と定義。初心者は決してこれらの投資手法は手を出してはいけないことを解説します。

長期投資の基本哲学

第2章では、長期投資の基本哲学について説明。私がここで印象に残ったのは次の言葉です。

「多数派に流されず、絶えず少数派であろうとすること」
「株式投資とは少数派のゲーム」
「過程をコントロールし、結果を出すのが運用」
「投資家は社会の潤滑油であり、相応の胆力が求められます。」

相場の詐欺師を見分ける方法
なるほどという見分け方が載っていました。興味を持った方は本書をご覧ください。

日経新聞もニュースも読まない
山本氏は日経新聞はおろか、ネットニュースなどの類は一切見ていないそうです。その代わり、企業から直接出されるリリースを読むそうです。(有価証券報告書、決算短信、特許情報など)

日経の観測記事に登場する上場企業は投資対象にならない
公表前の決算情報などが、なぜか事前に新聞に載るケースがありますが、こんな脇の甘い企業は先行きが危うく、投資対象外

PERの低さで勝負しない
PERの低さは「あてにならない利益」(=資本コストの高さ)の裏返し。PERが低い企業は長期の業績が予想できない。

資産バリュー株の不確実性
PBRが低い株は「経営者のコスト(=エージェンシーコスト)が高い」

リスクリターンの簡易計算法

第3章では、投資におけるリスクリターンの計算方法について解説があります。リターンは比較的簡単でも、少々難解なのがリスク。本来、リスクの計算では「標準偏差」と呼ばれる統計の概念を用いるのが本筋ですが、表計算ソフトを用いずに簡略化したリスクの計算方法について解説があります。

第4章・第5章でポートフォリオ運用を説明

上記の通り、第3章まで基本的な知識を説明した上で、残り2章で具体的なポートフォリオの構築方法を実在する個別株とETFを用いて行います。

「ポートフォリオ運用とはポートフォリオ自体を一つの銘柄と見なして超長期で運用する手段」であり、時間の経過とともに、リターンとリスクとの関係が良化する

おわりに

本書の締めとして「おわりに」は「投資の成功とは、最終的には企業の事業の成功とその持続に負うものです」という言葉がありました。

改めて、この言葉の意味することを肝に銘じて私も今後の運用を行っていく所存です。

なお、著者がダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチという投資顧問で投資の助言を行っており、そのサービス内容の説明がありました。

私も200人を超える会員の一人であり、年率20%を超えるリターンの実現を目指して、山本氏のアドバイスを受けつつ、会員同士も切磋琢磨しながら、運用を行っています。
(参考)【重要】資産運用に新たなスタイルを取り入れます。

以上です。

今回、ご紹介した本は2冊セットで読むことをお勧めします。

I hope you like it.

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