株高に沸く今だから言いたい。FIRE達成8年目の私が「絶好調の時の退職」に覚悟を求める理由

近年、日本でもすっかり人口に膾炙するようになった「FIRE」(経済的に自立して早期退職)。

かく言う私も、2019年にFIREを達成してから、気づけばはや8年目を迎えています。この間、さまざまな市場の波をくぐり抜けてきましたが、足元の好調な株式市場の状況を受けて、最近少し気になる現象を目にするようになりました。

SNS(Xなど)を眺めていると、「資産が〇千万円(あるいは〇億円)に達したので、来月退職します!」といった、非常に勇ましい決意表明が溢れているのです。

新しい一歩を踏み出す熱意は素晴らしいですし、他人の選択に外野がとやかく言う筋合いでないことは百も承知しています。しかし、同じ道を歩んできた立場から見ると、正直なところ「ちょっと危険ではないか……」とハラハラしてしまうのも事実です。

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恐ろしい「退職直後のマーケット軟調」という罠

私が懸念しているのは、「マーケットが絶好調の時に退職し、その直後、株式市場がしばらく軟調になった場合、本当に大丈夫なのか?」という一点に尽きます。

資産運用を前提としたFIREにおいて、最も警戒すべきリスクの一つが、リタイア初期に資産が大きく目減りする「収益率の順序リスク」(シーケンス・オブ・リターン・リスク)です。    

  • 絶好調の株価をベースに「これだけあるから大丈夫」と会社を辞める
  • 辞めた途端に相場が冷え込み、資産が想定を大きく割り込む
  • 生活費のために、値下がりした資産を取り崩さざるを得なくなる

ここを心して置かないと、せっかく自由を手に入れたはずが、退職してすぐに「こんなはずではなかった」と再就職活動を始める羽目になりかねません。

私の「上振れ」は、たまたま運が良かっただけ

偉そうなことを言っている私ですが、振り返ってみれば、2019年の退職時は今よりもずいぶん「低い位置(株価水準)」からのスタートでした。そのため、家族を持ちながらのリタイアではありましたが、予め厳し目にシミュレーションしていた計画よりも、結果的にはかなり上振れして推移し、今では資産が当時の倍増以上にまでなっています。

しかし、これはあくまで結果論であり、「たまたま運が良かった」に過ぎません。

たまたま引退直後の時期に強い上昇相場が来てくれたから良かったものの、これが逆の順序(退職直後に大暴落)だったら、全く違う景色になっていたはずです。ですから、実行に際してはくれぐれも慎重であるべきだと私は考えています。

保守的になりすぎるのも、また「罠」である

では、どこまでも慎重に、最悪のシナリオばかりを想定すればいいのかというと、話はそう単純ではありません。

あまりに保守的に見積もりすぎると、今度は「いつまで経っても会社を辞められない」という罠に陥ります。気づけば、働くこと、お金を増やすことばかりに貴重な人生の精力を費やし続け、本来の目的であったはずの「自由な時間」が後回しになってしまう。これもまた、避けたい事態です。

必要なのは「自分の状況分析と判断」というマネーリテラシー

石橋を叩きすぎて渡らないのもダメ。かと言って、好相場に浮かれて無防備に飛び出すのも危険。

結局のところ、正解は一律ではなく、「それぞれの置かれた環境(独身か家族持ちか、固定費はいくらかなど)に合わせ、自分の状況を客観的に分析し、覚悟を持って判断すること」。これに尽きます。

このバランス感覚こそが、これからの時代を生きるための「マネーリテラシーそのもの」ではないでしょうか。

昨今の好調な相場は、確かにFIREを後押ししてくれる追い風です。しかし、追い風はやがて向かい風に変わります。これからチェックアウトの準備をしている方には、ぜひ表面的な資産額の数字だけに躍らされず、地に足のついたシミュレーションと「自分の判断」を持って、素晴らしいスタートを切ってほしいと切に願っています。

拙著にもヒントを書きました。2021年の本ですが、参考になれば幸いです。

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