最近、よくCLOのことがよく(中途半端な理解で)メディアやネットで取り上げられるので、今回はこの件について、ご当局が出したレポートを読んだ内容を抜粋しながら簡単にですが、記事にしておきます。
経緯
・近年、世界的に企業の債務残高は増加を続けてきたが、米欧では特に、相対的にレバレッジが高く信用力の低い企業向けの貸付であるレバレッジド・ローン(レバローン)と、これを裏付け資産とする証券化商品である CLO(Collateralized Loan Obligation)の市場が早いペースで拡大してきた。
・日本銀行と金融庁は、本邦金融機関による海外クレジット投融資の実態について母国当局としてきめ細かく把握し、金融機関 における適切なリスク管理を確保するとともに、その金融安定面への影響に関する適正な評価の共有を図ることを目的として、昨年末にかけて「海外クレジット投融資調査」を実施した。
・この初回調査で明らかになった本邦 金融機関の海外クレジット投融資の規模や特徴について、残高の大きい大手行を中心に整理した上で、レバローンおよびCLOの投融資にかかるリスク管理上の留意点についても触れたもの。
「海外クレジット投融資調査」の概要
・本調査は、金融庁監督局および日本銀行金融機構局による合同調査として、大手行・地域銀行・ 信用金庫・証券会社・保険会社など、約400先に及ぶ幅広い金融機関の協力を得て業態横断的に実施
・本邦金融機関における 2019年3月末時点の海外クレジット投融資残高は、融資が約160兆円、投資が約100兆円であった。これを業態別にみると、融資・投資のいずれについても、大手行3行が大きな割合を占めており、他の業態に関しては、大手行に比べて残高が僅少であることが分かった。
・内訳をみると、融資・投資いずれについても、投資適格企業向けのエクスポージャーが約7割と大部分を占めているが、レバローンを含む非投資 適格企業向けの融資や、そうした非投資適格企業 向け融資を裏付けとする証券化商品である CLOへの投資、非投資適格企業の社債であるハイイールド債への投資なども 3割程度を占める。CLOについては、グローバルな市場における本邦金融機4関のシェアが 2割弱に達しているとみられる。
・大手行の保有する CLOを格付別にみると、99%以上が AAA格トランシェに集中している点で特徴的である。これは、米銀の 77%、英銀の50%強と比べても際立って高い水準である。
・CLO は、信用力が相対的に低い融資を裏付け資産とする証券化商品であり、市場残高が急速に拡大してきていたことから、リーマンショック前に同じく市場残高が急拡大し、その後の金融危機拡大の一因となった、サブプライムローンを裏付け 資産とする証券化商品との類似性を指摘されることがある。もっとも、1リーマンショック時に大きな損失に繋がったのはデリバティブを組み込んだ仕組みの複雑な再証券化商品(CDO、CDO スクエアード等)が中心であり、当時もAAA格のCLOについて元利払いが毀損した例はなかったことや、2リーマンショック時は、CDO等の証券化商品自体を担保とするレポにより投資資金を調達していた投資家が多く、証券化商品の価格 下落が資金調達難、ひいては投売りに繋がりやすかったのに対し、CLO自体を担保とするレポにより投資資金を調達している先は余り見られないことなどは、意識しておく必要がある。
(参考)CLOリポート、信用不安払拭狙う 異例の当局連名に(日経)
・「本邦金融機関の海外クレジット投融資の動向―日本銀行と金融庁の合同調査を踏まえた整理―」(日本銀行金融機構局・金融庁監督局:2020年6月)(PDF)
一言コメント
・重要な主な箇所を抜粋すると以上ですが、CLOについては「大手行の保有する CLOを格付別にみると、99%以上がAAA格トランシェに集中している」「当時も AAA格のCLOについて元利払いが毀損した例はなかった」ということであり、相応のリスク管理は行われているということなんですね。
・大手3行の残高が突出して多いことから、理解が浅い・不十分なメディアなどが騒いだため(確か国会でも話題になった気がする)、当局としてもしっかりと監視していることを内外に示す必要があったと思われます。
・CLOは非常に簡略化して言ってみれば、たくさんの融資を束ねたものなんですね。リーマンショック時に問題となったサブプライム・ローンと異なり、金融機関が中身の検証もできる点にも大きな違いがあります。この様にリスクを分かった上で投資しているのに、注目を集めたいメディアが大騒ぎしているという風にしか見えませんね。
↓ 以下の本のレビューなんかを見ていると「情弱」の極みです。(あ、言っちゃった)
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