9/4に実は注目のイベントがありました。
それは、米国の株式市場の主要指標であるS&P500の構成銘柄の見直しにおいて、テスラ株が採用されるかどうか決まる日だったのです。
結論は「NO」でした。
不採用の理由は「利益の質」か
日経平均でも、指数の見直しの前には「あの株が採用されるのではないか?」と多くの証券会社などが候補名を挙げます。でも、実際にはそれが当たったり外れたりしますね。
この指数に採用されるためには、
「4四半期連続で黒字の利益を維持していること」
「時価総額53億ドル以上」
「浮動株が発行済株式総数の50%以上」
の条件を満たす必要があります。
このうち、一番難しかった利益の条件を直近の4-6月期決算でクリアしており、外形的には条件を揃えて「審判の日」を迎え、結果はテスラおよびテスラ株ホルダーにとっては非情の形となりました。
今回、テスラが不採用となった理由については、おそらく公式には指数を決めるS&Pダウ・ジョーンズ・インディシーズの指数委員会からリリースは出ないと思いますが、ヒントは以下の記事にありました。
(参考)テスラのS&P500種指数採用、利益の質が左右-データトレック(Bloomberg)(2020/8/25)
テスラはここ数四半期、自動車メーカーに温室効果ガスの排出権を売却した分を除くとGAAP(一般会計原則)ベースで黒字を計上しなかった可能性がある。データトレックの共同創業者ニコラス・コラス氏によると、1-6月(上期)には排出権売却で7億8200万ドルの収入を計上した。これに対し、GAAPベースの純利益は2億2000万ドルだ。
コラス氏は「指数採用を管理するS&P委員会は本当に困っている。規則の文面上ではテスラは採用要件を満たすが、これは単に規制上の鞘(さや)取りによるものだ。自動車の設計や製造、販売から得られる基本的な収益性ではない」と指摘した。
現段階では、推測の域を出ませんので、これ以上深入りするのはやめておきます。
なお、この結果を受けて、9/4に418.32ドル(前日比+2.78%)で引けた株価は、アフターマーケットで約7%下落しました。
テスラ社概要
せっかくですので、改めて「Tesla,Inc.」がどんな会社か確認しておきたいと思います。
一般的には電気自動車のベンチャー企業として知られており、CEOは稀代の経営者イーロン・マスク
マスクは1971年南アフリカ出身のアメリカ人。ペイパル(PYPL)の前身の会社を設立したり、テスラ社以外にも宇宙関連のスペースX社の共同設立者であるなど、単なる経営者という表現では足りない実業家・エンジニアです。
そして、行動力が凄いですね。一方で、行動は破天荒であり、SNS上でも発言がしばしば舌禍となり、テスラなどの株価を急落させることがあることは有名です。
単なる自動車メーカーにあらず
テスラ社のことは、同社に投資している人が詳しいので、ここでは非常にわかりやすい動画をご紹介しておきましょう。
【米国株】テスラを自動車メーカーとしてみてはいけない理由!(とも’s投資ゼミ)
ともさんが言うように、テスラのことは単なる自動車メーカーとして評価するのではなく
・電気自動車
・バッテリー
・電力
・タクシー
・輸送
など、今後事業領域がどんどん拡大していく、ハイテクのインフラ企業的な存在として捉えていくのが妥当でしょう。
テスラ(TSLA)に対する投資判断
では、私がテスラに関して、どの様に考えているか、述べましょう。ツイッターでは、毎日の様に最近ツイートしていましたが、株価は「バブル」「割高過ぎて全く投資対象にはならない」というのが、私の「現状判断」です。
テスラの時価総額
2020年8月末の世界の時価総額ランキングは以下の通り
1 アップル
2 サウジアラムコ
3 アマゾン・ドット・コム
4 マイクロソフト
5 アルファベット
6 フェイスブック
7 アリババ
8 テンセント
9 バークシャー・ハサウェイ
10 テスラ
何と世界10位に食い込んでいるのです。従来自動車メーカーで時価総額トップだったトヨタは48位。少し前に並んだかと思ったら一時倍以上になっていました。ちなみに、本投稿時点で392ドルで計算して約41兆円(389.794B)、PERは1,000倍を超えています。トヨタは22兆円です。
いくら単なる自動車メーカーではないとしても、一体全体「どこまで織り込んでいるのか!」と頭を傾げます。
競合他社も黙っていない
なるほど、私もマスクの経営手腕や当社の持つポテンシャルの高さは認めます。でも、世の中は当社だけが自由にできるわけではなく、トヨタやその他テスラとライバル関係にある企業は、虎視眈々と対抗策を準備してくると思います。
そして、例えばトヨタだって何も一人で戦うとは限らず、トヨタ・アリババの戦略的提携なども決してない話ではありません。内燃機関の危機が叫ばれる中、一番、将来を憂いでいるのは他でもないトヨタ。必ず、何か手を打ってくると私は思います。(日本人ですから)
温室効果ガス排出権の売却の継続性
そして、自動車事業の収益性が厳しい現状でテスラの収益に貢献している排出権の売却にしても、現行の規制の枠組みにおいての話であり、こうした事は国際的な政治のパワーバランス一つで、あっけなく仕組みが変わり得るものと言えます。
(参考)欧州の車排ガス規制、罰金1.8兆円 主要13社の21年推計(日経会員向け)
良い会社への投資=良い投資ではない
私はテスラについては、以前から「凄い会社」だとは思っていましたが、私の投資基準では信用力も非常に低く、マスクの破天荒な生活態度もあって「投資不適格」の扱いをしていました。
正直、最近、マーケットがテスラのことをここまで評価していることは、全くの想定外でした。でも、株価が大きく上昇する前から「投資不適格」としていたのに、株価がこんなに上昇してから「投資したい」と思うはずはありません。
現状、私はテスラをまだ評価の定まった「優良企業」と見做していませんが、仮にそうだとしても、割高な株価での投資は「良い投資ではない」のです。
ツイッターでアンケート「テスラの株価が高値から2割下落しました。さて、1年後の株価はどうなっていると思いますか?」を取ったところ、257票のうち62%の方が「上昇」、26%が「下落」、そして「大きな変化なし」が12%という結果でした。
株価予測はその個別企業の状況だけでなく、市場全体の状況の影響も強く受けますが、私は「1年後は下落」していると考えています。
一方で、テスラが電気自動車全盛の時代を迎える2030年頃に現在の規模の時価総額を維持している可能性は十分あると考えます。ちょうど、かつてシスコシステムズがITバブル時に時価総額が世界一になり、バブルが弾けてから現在でも相応の地位(時価総額は約18兆円:172.354B)を維持しているのと同じ様に
以上、かなり勝手な考えを披露しました。
バブルの時は、ファンダメンタルズに関わらず株価は形成され、それがいつピークを迎えて破裂するか誰も分かりません。ですので、投資に際しては、くれぐれもご自身の判断に基づいて自己責任でお願いいたします。
P.S.
テスラがついにS&P500に採用されることになりました。(2020/11/17)
(参考)テスラをS&P500種銘柄採用、12月21日取引開始前実施-株価上昇(ブルンバーグ)
なお、私も同社株への投資を少し前から開始しています。
I hope you like it.