セミリタイア5年目の2023年を総括

『全面改訂 超簡単 お金の運用術』(山崎元)は中身が濃い一冊

この記事は約5分で読めます。

以前読んだ本の再紹介シリーズです。

今回は論客・山崎元氏の代表作の一つと言っても過言でない『全面改訂 超簡単 お金の運用術』をご紹介します。

ご紹介と言っても、2013年出版で既に定評のある本なので、読んだことのある人がたくさんいることは承知していますが、新アドレスとなった当ブログにログを残すことが一番の目的なので、ご容赦ください(笑)。

とは言え、マジで未読だったら一読推奨の一冊ですぞ。

本書の内容を一言で表せば、

・一般の個人投資家にとっては、単なる「運用術」に関する本としてではなく、本当に重要なポイントが濃縮された「マネー・リテラシー全般に関する必読書」です。 (これだけ幅広く、重要な事項が簡潔に新書というフォーマットに集約されているのが本書の凄いところ)

・そして、株式、債券、投資信託、生命保険、さらには不動産、FXといった金融・投資商品等を取り扱う銀行、証券会社、生保、FP等にとっては不都合な内容が満載の「痛い」本です。

・この「痛さ」が痛烈ゆえに販売業者側からは大いに反論も出そうですが、それだけ一般個人にとっての「効用」は非常に大きい一冊と言えるでしょう。

1 本書概要

・「簡単に誰でもできるお金の運用方法である「超簡単 お金の運用法」を説明することを通じて、読者に、お金との「気持ちのいい」付き合い方を分って欲しい」というのが本書の狙い
・前回版と考え方は同じ。運用方法をよりシンプルに。
・たぶん他のどの解説本よりもハッキリと「正しい利用法」を書いたというNISA(少額投資非課税制度)と確定拠出年金の章を追加

2  超簡単 お金の運用法

・1)極めて簡単だけれども、2)現実的にはほぼベストに近くて、3)無難な運用方法、として著者が下した結論は以下のとおり。前回同様、外国債券や外貨預金・FXの類は運用商品の対象にはなっていません。
1⃣当座の生活に必要なお金(たとえば生活費三カ月分程度)を銀行の普通預金に置く。
2⃣残ったお金を、「リスク運用マネー」と「無リスク運用マネー」(好きな金額を割り当てる)に分割。
3⃣「リスク運用マネー」は、「TOPIX連動型上場投資信託」と「SMTグローバル株式インデックス・オープン」に半々に投資。
4⃣「無リスク運用マネー」は、「個人向け国債」(10年満期タイプ)または「MRF」で持つ。
5⃣大きな支出の必要が生じたら、「リスク運用マネー」あるいは「無リスク運用マネー」のいずれかを「躊躇なく」部分解約。
6⃣NISAと確定拠出年金を最大限に活用

3 主な特記事項

・では、本書を読んで、私が個人的に印象に残った箇所について、簡記しておきます。

(1) 内外の株式への投資比率

・前回版では「国内株式」と「外国株式」の比率をGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の1973年から2007年のデータを参考にして、4:6に設定
・今回、2012年までのデータを参照した結果、これを5:5とした。「日本株と外国株のリスクと期待リターンをほぼ同じと想定してリスク資産の最適化を行うと、両者半々になった」とのこと

→この比率については、議論の別れるところです。本書の中で、読者から一番異論が唱えられるとすれば、この箇所でしょう。なお、著者もこの比率については「四対六から六対四の間に入っていればいいくらいの大らかさで構えてもらっていい。」とコメントしています。

(2)人生の豊かさに重要な六つの要素

・お勧めの運用方法を説明(第一章)した後、第二章で最初に触れられるのが、この事項。「普通の人生にとって、お金の運用の巧拙は「決定的に重要!」といえるほど重大な影響を及ばさない。」というのが著者の主張。
・一番目は「稼ぎの多寡」、二番目は「支出・貯蓄の習慣」、三番目は「住居・不動産」、四番目「保険」 、五番目「自動車」と続き、六番目くらいに「資産運用」が「普通の人」にとっては重要としています。(本書では各項目について説明あり)

(3)人的資本と資産運用

・「一般には、若い人は金融資産の中で大きな比率でリスクを取ってもいいように言われることがあるが、その正しい理由は「長期投資だとリスクが縮小するから」ではなくて、「人的資本を考えると、金融資産の運用で取るリスクが相対的に小さいから」なのだ」(ただし、人的資本には個人差あり)

(4)ライアビリティと「人生のALM」

・将来お金が必要という状況は、概念的には負債であり、いわば借金のようなもの。これをライアビリティと呼んでおく。
・「個人の資産運用を考えるときには、自分の「人的資本」や「ライアビリティ」のことを頭の片隅に置いておくと、見通しがよくなる」

(5)NISAと確定拠出年金に関して

・今回、追加された項目ですが、私はそれほど価値を感じませんでしたので、割愛します。ご興味のある方は本書でご確認ください。

・この分野に関しては、当ブログでご紹介した『自分で年金をつくる最高の方法』を一読されることをお勧めします。

(6)第四章「お金のあれこれ簡単レクチャー」がお勧め

・第四章では、お金の運用・扱い方全般に関わるトピックについて、質問に答える形式で触れています。
・「景気循環と資産運用」「インフレ・デフレでとるべき資産運用は異なるのか?」「外国為替は投資に向くのか?」「資産運用の中での住宅の位置付けは?」「生命保険の正しい選び方は?」「アドバイザーの選び方」等どれも興味深いものであり、「貨幣錯覚」「行動ファイナンス」といったキーワードも活用しながら毎月分配型ファンドやFX、医療保険等に対して「山崎斬り」が炸裂するとても面白い章です。

4 最後に

・著者曰く「一層実用的で、主張の分りやすい本に仕上がった」という本書。読み終えて「トータルの完成度」と「内容の濃さ」は文句なしの良書でした。
・ただし、確かに簡潔で分りやすい本ですが、「超簡単」なのは本書で提示された運用方法の結論であり、金融等に関する一定の知識があった方がより「面白く」読める本であることを強調しておきます。

・「著者の同業者も含めて、金融関係者には、ビジネスに不都合な内容を多々お知らせすることにもなったが、これらは全て、広義の金融ビジネスのサービス水準の向上を願って書いた」との著者の言葉をご紹介して、本エントリーを締めくくります。

I hope you like it.

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この記事を書いた人
エル

50代、4人家族。1991年株式投資を開始。リーマンショックの影響により過去最高の含み損を抱えるも、2009年末に復元。2011年レバレッジ投資(両建て投資)終了。2019年セミリタイア。現在は米国株を中心に運用中。趣味は読書で「積ん読」は数百冊を誇る。音楽や映画鑑賞も好きです。

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