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『ご隠居のすすめ』(著:木村尚三郎)を読了

エントリー「老後のお金の不安の解消法」の中で、「若いうちはお金のことばかり考えるのはよしな」とやんわりと書いたところですが、私が若い頃、よく読んだ作家に木村尚三郎という方がいます。

今回、たまたま懐かしい名前を見かけ、古本で購入し読んだものです。

このひたすら自分に忠実な生き方こそ、これからの私たちの目指す理想ではないか。

木村尚三郎氏のプロフィール

・1930年(昭和5年)生まれ、東京都杉並区出身。東大文学部西洋史学科卒。東大教養学部教授を経て、東大名誉教授などを歴任。
・歴史学者の目で見た現代文明論や、音楽・映画批評、料理や生活文化に関する著作を幅広く手がけた。また、日欧の比較文明論や文明史に係わるエッセイを新聞雑誌に多数執筆。
・2006年10月逝去。享年76。
・多数の著作があり、私が読んだ覚えのある中でいくつか列挙すると以下の通り。
『男時・女時の文明論』 PHP研究所, 1986、PHP文庫
『「耕す文化」の時代 セカンド・ルネサンスの道』 ダイヤモンド社, 1988、のちPHP文庫
『文明が漂う時』 日本経済新聞社, 1992

単なる学者ではなく「ヨーロッパ的な洒脱な教養人」であるところが、当時(80年代後半から90年代前半)私のフィーリングにマッチした。

本書のメモ

隠居とは何か

・隠居自体はもともと頻しい世間から離れて山野に隠棲すること。非常に昔からあったもの。江戸時代を経て明治民法においてもその規定あり。
・家督すなわち家名と家の財産、家の祭祀を放棄して相続人に譲り・・・・・(略)つまり、住居も台所も財産も別という、別居、別産、別竈の生き方に入ること
・本書で取り扱う「隠居」はこの厳密な意味ではなく、いまある物の考え方とか生き方のしがらみから離れ、自由な発想で生きることを指す。プラスイメージの「隠居」:楽隠居
・今までやってきたことから自分を離す形で、精神の自由な世界を作り出す。

隠居は何歳からが望ましいのか

・65歳からの「フル隠居」の前、55歳ないしは60歳、できれば50歳くらいから始めるといい。

隠居と財産

・不動産を使い切るリバース・モーゲージ。もともとは中世のヨーロッパで、子供のいない老夫婦が修道院と契約を結んだことに由来。
・「エコノミー」:日本では「節約」や「経済」という意味になるが、もともとはギリシャ語の「オイコス」(家・環境)と「ノモス」(法・秩序)が合わさった意味。したがって、「自分の家を知恵をもって治める」、これが本当のエコノミー

ご隠居の生活指南

・身綺麗は精神を活性化させる。おしゃれは、いろいろな世界、さまざまな分野の人と出会うパスポート
・裸で就寝し皮膚を鍛える。欧米人は素っ裸で寝る人が多い。
・美しい服装術は等身大の鏡から。我が家の壁面に等身大の鏡を確保したい。
・食:自分の好きなものを好きなように食べる。肉食のすすめ
・「誰かに呼ばれたときは、きょうは必ずいいことがあると思って行け」(『葉隠』)
・フランス語のCONVIVIALITE・コンヴィヴィアリテ:共に食事をして楽しい時間を共有するような関係の意味
・ヨーロッパではおなかを壊したとき、治りかけに上等なステーキを食べる。(消化がいい)
・子供よりも隠居にこそ個室
・21世紀人にとっての3つの自由:グッズ・フリー、タイム・フリー、インフォメーション・フリー。最後の情報から自由になることが一番難しい。
・一人旅を通して新しい人生、時代を考え直す。「私は青春時代の前半を書物の勉強に使った。しかし後半は書物の勉強を全て捨て、世間という大きな書物を読むために旅に出た。そこから、自分の研究が始まった」(デカルト『方法序説』)
・日本に花開かせたい恋する世界
・組織から離れることは現世極楽
・自分史の中でヒーローになる

以上です。

まぁ、私はまだ52歳なので「ご隠居」呼ばわりされるのは抵抗がありますが、アーリーリタイアしたので、やってること・やれることは大学教師稼業を大学定年まで続け、その後ご隠居稼業をしていた著者とは変わりはありませんね。

なお、著者は働くことを全否定しているわけではありません。ただ、「誰にも気兼ねすることなく、誰に遠慮することもない。嫌な仕事なら、断ればいい。」と述べています。

I hope you like it.

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