「理解できないものには投資しない」との理由で長らくハイテク分野に投資していなかったウォーレン・バフェットが、2011年7~9月期にIBM株への投資を始め話題をさらいました。
それから、数年経った今月。同社株式をバフェットが運営するバークシャー・ハザウェイが約30%売却したことが明らかになり、米国株に投資する個人投資家の間ではこの話題で持ちきりです。
「あのバフェットが売ったんだから追随しよう」「いやいや、バフェットはバフェット。俺の投資は俺が決める」と当然のことながら、反応は別れています。中にはこのニュースで少し株価が下がったタイミングでここぞとばかり追加投資する方もいたりします。
こうした中で、私が注目したのは、ある投資家の判断です。
米国株投資家には比較的有名ですが東条雅彦氏という方がいます。この方、なんとIBM株式のみに全財産6800万円を集中投資していました。『バフェット流投資会社で富を築く資産防衛の真実』という本も出されていて「永久」にIBMに投資すると豪語していたのですが、今回のバフェットの行動を踏まえ、半分を売却し、その資金でGoogleを傘下におさめているアルファベットに3000万円投資した旨、自身が運営するブログで告白していました。
(参考)
・IBM株を半分、売却して、Google株を取得しました!(ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分で学ぶ株式投資)(ブログを閉鎖された模様)
これによれば、IBM株式の売買で約330万円のキャピタル・ロスを計上したそうですが、一方で2015年からインカム・ゲイン(配当金)をほぼ同額受領していた様です。
これだけの集中投資をしていたのですから、相当IBMについて研究していたでしょうし、注目もされていたので苦渋の決断だったことでしょう。この決断が良かったのか、間違いだったのかは10年くらい経たないと判明しないかもしれません。
そして、私が注目したのが日経の記事です。
(参考)
・アップルは「IBM化」を避けられるか(日経会員限定)
私は本か何かで読んで知っていましたが、記事によればバフェットはIBMに投資する50年も前から当社のことは詳しく研究していたそうです。
バフェットは三度の飯よりも各種レポートを読むのが好きで、『ムーディーズ・マニュアル』を端から端まで読み、1日も欠かさずウォールストリート・ジャーナルを熟読し、米国企業が出す(証券会社が出すものではない)年次報告書などを丹念に読んできました。どんなビジネスモデルなのか、強みや弱みは何か?経営者は誠実か?などチェック項目は私の様な凡人には思いつかない多岐な視点で企業(株ではない)を見ていたはずです。
そして、主要な株主として投資した後、バフェットは原則経営に直接口出しはしないとの立場でしたが、実際には投資された企業の方はバフェットの一挙手一投足を注視するという関係にありました。
今回もIBMのCEOはバフェットに接触を試みましたが、バフェットを翻意させることはできませんでした。
バフェットクラスの投資家においては、もちろん公開情報を中心に投資の判断は決定されていますが、表に出ませんが非公開情報に接触しやすい立場にあり、これも活用して投資決定をしているはず。(これは、完全な私の推量です。)
だから、「擬似インサイダー」と言っても過言ではないバフェットの今回の「IBM株式の約30%」の売却の判断は相応に「重たい」ものだと私は受け止めました。
個人投資家においては、当然にそれぞれが自己判断すべきことですが、バフェットの判断とは異なる行動を取ることを最優先するあまり、フラットで合理的な意思決定ができない(俺は違うと変に突っ張る)ということのない様、留意すべきだと考えます。
以上、ちょっとお節介な意見でした。
I hope you like it.