2014年6月「株式会社きんざい」から出版され即読んだ本です。
一言で表現するとすれば「中高年者へのエール本」って、感じでしょうか。
中身の説明に入る前に、本のタイトルの由来と著者のプロフィールについて触れておきましょう。
1 タイトルについて
・本書のタイトル『定年楽園』の文字をぱっと見てどんなことを想像するでしょうか。普通であれば「定年後には楽園が待っていますよ」とか「定年後に楽ができる園」といったことをイメージしがちだと思います。
・著者「自ら付けた」タイトルに込められた想いは異なります。それは「定年後に楽しく活動できる園」を目指して今から準備しよう、という意図が込められています。
・2012年の高年齢者雇用安定法の改正により、希望者は最長65歳までの雇用が義務付けられました。でも、現実には定年延長になった会社はごく少数であり(ほとんどが60歳定年で再雇用)、60歳が一区切りであることは従前と変わりません。
・本書は60歳という定年を控えた40歳代後半、50歳代が、その後の仕事や生活を充実させて、豊かなセカンドライフを送れるよう著者の経験を踏まえ書かれたものとなっています。
2 著者プロフィール
・著者は現在62歳(当時)。2年前まで野村證券一筋のサラリーマンでした。少し詳しく説明すると、60歳での定年退職後、半年間だけは「再雇用」の身分も経験。また、最後の10年間は社員数60名程度の関連会社に在籍した経験も有します。
・上記会社を退職後、2012年に株式会社オフィス・リベルタスを設立。資産運用、企業年金、シニア層のセカンドライフプランニングなどをテーマとした講演や執筆活動などを行っています。
3 個人的に印象に残った点
(1)終戦直後よりも少ない摂取カロリー
・人生の3大不安と言われる「病気」「貧困」「孤独」。老後ともなれば、誰でも健康に留意します。肥満度を表すBMIの数字は、25年前に比べ女性は横ばいですが、男性は何と1.5倍に増加。
・一方、日本人の一人一日当りの平均摂取カロリーは1849カロリー(2010年)と、なんと終戦直後(1946年)よりも少ないとのデータが出ていました。
・つまり、現代人は明らかな運動不足なので、「少し無理する健康づくり」(例えば、エレベーターを利用せず階段を使う等)を推奨しています。この「少し」がポイント。
(2)老後に必要なお金
・自分で用意する金額=(何もしなくても入ってくる収入)ー(定年後から生涯かかる生活費)
・生活費を月30万円、仮に60歳から25年間とした場合、9000万円の生活費が必要
・一方、公的年金は夫婦2人(片方が専業主婦・主夫の場合)で年間270万円。25年間で6750万円となる。これは上記生活費が月22万円で計算した場合の金額6600万円とほぼ同じであり、最低限必要な金額を用意するだけであれば、公的年金だけで賄うことが可能。
・公的年金は給付が終身のため「長生きリスク」に対応可能。
・老後の生活を支える3つの柱は「公的年金」「退職金・企業年金」「自分の蓄え」であるが、最も大きな土台となるのは公的年金である。
(3)年金は大丈夫なのか?
・加入記録の問題、年金保険料未納付の問題、年金財政の問題、公的年金の制度自体の問題と年金には大きく4つの問題がある。
・年金保険料未納の問題が「年金未納率4割」と喧伝されるが、 年金加入者(7000万人)の7割を占めるサラリーマン、公務員及びその配偶者は納付しており、未納になる可能性があるのは自営業者、学生、無職などの人。このうち純粋に払う意思がなくて払っていない人は300万人であり、加入者全体に占める割合は5%にも満たない。
・年金財政は国の一般会計とは分離されている。年金特別会計の中で管理されている年金の積立金残高は平成24年末で126兆円。「年金積立金管理運用独立行政法人」(GPIF)が運用しているこの126兆円は年金支払いの原資ではなく、過不足が出た場合の調整勘定。
・少子高齢化という問題を抱え、制度上の問題を有するものの、対応策は20年以上前から進められている。対応策は1⃣年金支払い時期を遅らせる、2⃣年金保険料を値上げする、3⃣年金支給額を減らすこと。
・少子高齢化も未来永劫に進むわけではなく、また、団塊の世代に偏在する金融資産もこれから相続や相続税のかたちで社会全体として回っていく。
(4)“知識”よりも“常識”
・金融の世界における常識で大切なことはたった二つ。「先のことは誰もわからない」「世の中にうまい話はない」
(5)時間でお金を節約
・現役時代に比べ収入は減るが、時間は豊富。従来は時間がない分をお金で買っていたが、今度は逆に時間を使うことによりお金が節約可能。
(6)仕事を探すルート
・60歳以降の転職で仕事を探す場合の最大のポイントは「人脈」を使うこと
(7)定年退職後は起業に最適
・多くの人が自分のやりたいことがあるため独立したいと思っている反面、収入面での不安があるため二の足を踏んでいる状況を考えると、定年退職した人こそ一番起業に適した立場とも言える。
(8)著者の3つのやること、5つのやらないこと
「3つのやること」
・自分のやりたいことをやる
・自分の能力を活かせることをやる
・世の中の役に立つことをやる
「5つのやらないこと」
・法律や職業倫理に反することはしない
・借入や大きな設備投資はしない
・規模は拡大しない
・特定の企業や団体の紐付きにはならない
・お金のために主義主張は曲げない
(9)「人脈」の定義
・「人脈」とは、あなたがどんな能力をもっていて、そのレベルを正確に把握している人たちとのつながりのことを言う。
・現在サラリーマンであれば、上司や部下、同僚は間違いなく人脈
(10)地域活動は簡単ではない
・地域での活動は、そこで通用しているルールが明文化されておらず、タテ社会の関係が全生活にわたって支配する世界。ドライな会社での人間関係と異なり、地域コミュニティでの人間関係はウエットであり、下手に手を出すと大変。
(11)なんでも自分でやる
・今まで会社任せ、奥様任せ、部下任せにしていたことを、全て自分でやると生活風景が一変する。
(12)定年楽園への道
・基本は“働くこと”。単に収入を得るという意味だけでなく、「活動する」ことを含む。
・そうすれば、「自分の居場所をつくる」ことができ、「孤独」にならずにすむ。心身共に健康を維持しやすくなる。
・事前に準備すること。一番大事なことは「自分がなにをやりたいか」を考えること
・「自立」の意識を持つ。本書で一番言いたいことはこのこと。
4 まとめ
・ 長々と書いてきましたが、そろそろまとめましょう。著者は、世界に例を見ないような超高齢社会に入りつつある日本では、元気で働くことが一番大切と言います。
・「自立して何でも自分でやる、そして、誰かのためになることをやる」。そうすれば、思いがけない人とのつながりやまわりからの感謝が生まれ、自分の居場所が自然に確立されていくと。
・著者はそのことに50歳代半ばで気づき、実践してきたそうですが、本書を読んだ私も実践したいと思います。いつやるの?今でしょ!
・まだまだ書ききれない素敵な内容の本です。40歳以降の方だけでなく、幅広い世代の方に自信を持ってお勧めします。
I hope you like it.